拠点概要

産学共創シナリオの概要

産学共創シナリオの構成図(図3)を示します。国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)である、「SDG7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「SDG9:産業と技術革新の基盤をつくろう」「SDG12:つくる責任つかう責任」「SDG13:気候変動に具体的な対策を」の解決に技術とは何か、我々が有するどのような技術で貢献することができるのかを考えました。そこで、拠点ビジョンとして、「有限鉱物資源の安全かつ革新的な高効率・再循環・超クリーン精製技術による循環型社会の実現」を目指すことによりSDGs解決に繋がると考えました。そして、この拠点ビジョン実現に向けた駆動目標であり、実現可能な社会実装の姿として、「安全性、経済性及び環境性に優れた新たな金属精製事業の実現」及び「都市鉱山からの選択的金属資源の回収事業の実現」をターゲットとしています。そして、拠点ビジョンに対するこれらのターゲットを達成するため、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下「QST」という。)で開発した「化学処理とマイクロ波加熱を複合化した低温精製技術」(以下、「中核技術」という。)を発展させて、実用化及び事業化を図ります。

図3

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中核技術:新たな金属低温精製技術

当中核技術は、核融合原型炉で不可欠な金属であるベリリウム(Be)の新たな精製技術として開発しました。核融合原型炉では、1基あたり約500トンのBeが必要となります。Beの鉱床は中東を除く世界中に分布しており、その埋蔵量は十分にあることが既に確認されていますが、現在のBeの全世界中の生産量は年間300トン程度であり、それを米国の一企業がほぼ独占的に販売しており世界市場的に見ても非常に稀有な状況です。そして、Be鉱山の多くは採鉱が休止状態にあり、再稼働するにも新たな精製プラントを整備する必要があります。また、Beは非常に高価であるが、その理由は寡占市場構造であるだけでなく、精製プロセスが非常に複雑であることも原因の一つです(図4)。既存プロセスと新たな低温精製プロセスの概要比較図(図5)を示します。既存プロセスは工程が多く、2000℃での高温処理や、作業者の健康障害や事故・トラブルリスクが高い粉塵を取り扱う乾式工程を多く含んでいます。そのため、熱消費が膨大であり、エネルギー多消費型生産プロセスの典型的なものであり、運転維持に係る経済性及び安全性に重大な問題を有しています。そこで、QSTでは、新しい精製技術の開発に着手し、マイクロ波加熱と化学処理の複合化により、250℃以下の低温処理で精製工程が少なく、粉塵を生じない湿式工程を主とする新たなBe精製基盤技術を開発して、設備整備・維持に係る経済性と安全性の課題を一挙に解決しました。当中核技術では、安定な鉱石でも完全溶解できることから、特に、熱・化学的に安定で精製のために高温処理が必要とされている多種多様な鉱石からの精製技術としても応用可能であるとともに、都市鉱山である家電などに含まれるレアメタルのリサイクル技術にも応用可能です。さらに、全工程においてほぼ湿式・密封状態でライン処理することが可能であることから、実質CO2放出ゼロを達成できる技術であり、省エネのみならずCO2削減にも大きく貢献できます(図1)。

図4

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図5

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図1

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